モラル哲学者が「悪の否定」を警告する新著を発表
モラル哲学者サマンサ・ネイマン氏が、悪の本質を問い直す新著『CALL IT EVIL』を発表した。同書では、米国における価値観の崩壊に対し、道徳的普遍主義の復活を訴えている。
モラル哲学者サマンサ・ネイマン氏は、米国における価値観の崩壊に対し、道徳的普遍主義の復活を訴える新著『CALL IT EVIL』を発表した。同書では、トランプ大統領の「破壊的な思想」を「悪」と呼ぶことを求め、悪の本質を再考する必要性を強調している。ネイマン氏は、ハナ・アーレントの「ファシストの悪」の概念を引き継ぎ、悪は「悪意」ではなく「思考の欠如」であると指摘している。
同書は、7つの論考から構成され、米国の現在の状況の原因として、市場主義と法よりも権力が優先される傾向を指摘している。また、アイデンティタリアン政治や「ワーキング」(wokeness)の支持者に対しては、「道徳的な言葉の使用を控えることの結果」を批判している。ネイマン氏は、米国が豊かな国々の中であらゆる指標で後れを取っていることを指摘し、啓蒙思想の価値を再確認している。
アダム・スミスの「無形の手」が、資本主義市場の自己調整ではなく、神の善意を指していたことを指摘し、その視点を現代に再解釈している。一方で、ネイマン氏の「ワーキング」への批判は、右翼の典型的な論調に近いものであり、特に、差別的背景を持つ人々にとって能力の獲得がより困難であることを無視している。また、トランスジェンダーの権利を「特定の部族主義」の産物と見なすのは、その背後にある自由な人生の追求を軽視している可能性がある。
ネイマン氏は、米国における価値観の崩壊を「道徳的普遍主義の喪失」と見なし、その復活を呼びかけている。同書では、市場主義の影響や権力の優先が、社会の倫理的基盤を弱体化させていると指摘している。また、自由主義・左翼が道徳的言語を避けることによって、悪の認識が曖昧化していると批判している。
ネイマン氏は、米国の現状を「思考の欠如」による悪と位置づけ、その解決策として、啓蒙思想の再評価を主張している。同書は、現代社会における倫理的課題を深く掘り下げ、読者に新たな視点を提供する。
同書は、ネイマン氏がこれまでに発表した『Learning From the Germans』(2019)と『Left Is Not Woke』(2023)に続く、文化的批評の継続である。今後の議論に大きな影響を与える可能性がある。