サイモン・アーミテージの新作詩集『New Cemetery』――コロナ禍の墓地建設に触発された省察のオーディオブック
桂冠詩人サイモン・アーミテージが、故郷ハダースフィールド近郊のパンデミック中に建設された墓地を見守りながら、幼少期の記憶や変化する地元風景について詠った詩集『New Cemetery』のオーディオブックが発売された。著者自身が朗読する三行連による詩には、亡き父への言及や moths(蛾)の種名が冠されている。
英国桂冠詩人サイモン・アーミテージの新作詩集『New Cemetery』のオーディオブックが配信された。同コレクションの着想は、ヨークシャー・ハダースフィールドの自宅近郊で、新型コロナウイルス対策のロックダウン中に自治体が放牧地を墓地へ転用する計画を進めたことに端を発する。ハダースフィールド近郊出身で自身も計画の敷地近くに居を構えていたアーミテージは、収集される死者が「公的な便益施設や私的な醜悪建築のせいで立ち退きされる可能性は低い」と推察し、静寂を愛する書き手にとって理想的な隣人になるとエッセイで記している。
収録詩の着想は、墓地が造成されていく過程――牧草地が歩道や駐車場、整理された埋葬区画へと姿を変えていく様子――を目の当たりにした経験に根ざしている。この時期は、幼少期から彼に「正しい斧の持ち方」を教えてきた父親が他界した時期と重なる。詩のなかで著者は「You're holding it all wrong / It's not a pen」と、亡き父の言い方をそのまま響かせている。
収録作品には、それぞれ moths(蛾)の種名が題として与えられている。例として「Common Quaker」「Dark Brocade」「Pine Beauty」「May Highflyer」が挙げられ、いずれも三行スタンザで書かれている。オーディオブックでは朗読もアーミテージ自身が担当しており、「優しく、どこか物憂げな」語り口が聴取者を捉えて離さない。
詩のなかには、変化し続ける風景を観察する声、幼少期の記憶を想起する声が交錯する。母親が台所の流しで洗濯をし、「manhandling shirts, / hauling drowning sailors / from sea to deck」と船の遭難者を引き揚げるようにシャツを扱っていた情景や、父がクリスマスイブに「pantomime grinch」を演じた記憶が綴られる。一方で、著作小屋に座る仕事人の皮肉な自画像も描かれ、「dither a while / poem-less under / trepanned tiles, stalled // in the anglepoise / of heaven / and desk」と、天と机の角度の中で詩の言葉を探る姿が三行で切り取られる。
オーディオブックとしての聴きどころは、墓地という主題に寄り添う静謐な音空間と、著者本人による声音の親密さにある。聴取者は、パンデミック下の公共事業が地域に投げかけた影と、個人史における喪失とを、詩人がどのように同一の風景のなかで織り上げたかを耳で追うことになる。